ウィシュマ死亡事件裁判支援の呼びかけ(START)

「ウィシュマさん名古屋入管死亡事件 国家賠償請求裁判」のご支持・ご支援の呼びかけ



 2021年3月6日、名古屋出入国在留管理局(名古屋入管)の収容施設で、スリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさんが33歳という若さで亡くなりました。
 STARTがウィシュマさんに面会を始めたのは2021年12月16日です。名古屋入管に収容されていたウィシュマさんは、当初はDV被害を受けていた男性から逃れるために、帰国することを望んでいました。しかし、その男性から、スリランカに帰ったらウィシュマさんに「罰を与える」と書かれた手紙が送られてきたことによって、「帰国したら殺される」という恐怖を感じながら収容生活を送っていました。ウィシュマさんは帰国できない深刻な事情を抱えていたのです。しかし、帰国すると伝えていた入管に「帰らない」と言い出せず、鬱々とした日々を送っていました。STARTに面会したウィシュマさんは、藁をもつかむ思いで、「帰国したくない、日本に残りたい、どうしたらいいですか」と、苦しい胸の内を明かしてきたのです。私たちが全面的に支援することを伝えると、ウィシュマさんの表情はやわらぎ、満面の笑みを浮かべ、全身で感謝と安堵感を表現していました。
しかし、翌日、ウィシュマさんが、入管職員に対して、「スリランカに帰らない、日本に残る」と伝えた途端、職員の態度、表情は一変しました。「帰れ、帰れ、ムリヤリ帰される」と、何度も何度も帰国圧力をかけるようになりました。ウィシュマさんは、明日にでもスリランカに帰されてしまうかもしれないという、新たな恐怖に襲われ、そのストレスから、12月下旬頃にはすでに体調を崩していました。しかし、入管は、ウィシュマさんの体調不良を、収容施設の外に出るために病気のふりをしている、すなわち詐病と決めつけ、まともにウィシュマさんの訴えに耳を傾けようとせず、治療も受けさせませんでした。
 ウィシュマさんは、1月になると食事を摂っても吐いてしまうようになり、2月からは自力で歩くことさえ困難な状態になってしまいました。2月15日の尿検査の結果は、自力では生きていくためのエネルギーを、まともに摂れない飢餓状態であったことを示していましたが、当時、入管はこの検査結果を明らかにしませんでした。入管は、体調が悪化し、点滴を打ってほしいというウィシュマさんの命の懇願さえも聞き流し、ウィシュマさんをウソつき呼ばわりし、厄介者扱いして、まともに人間扱いすることなく、見殺しにしてしまいました。
 ウィシュマさんが亡くなってから、ご遺族は一貫として、ウィシュマさんの死の真相究明を、法務省―入管庁に対して求めています。しかし、死亡事件から1年以上たった現在も、死因すら明らかにされず、重要な証拠となる、ウィシュマさんが収容されていた単独室の、監視カメラの映像の全面開示さえ、拒否し続けています。そして、ウィシュマさん死亡事件の原因は、医療体制の不備、名古屋入管の現場職員の職務怠慢、意識の欠如にあると、真相究明とは程遠い部分的問題を取り上げて、幕引きしようと躍起になっています。

 とんでもないことです。ウィシュマさんの死因は何か、死亡事件の責任はどこにあるのか、徹底して究明されなければなりません。
法務省―入管庁は2020年から、退去強制令書が発布されているにもかかわらず、送還を拒否する外国人、すなわち「送還忌避者」を、日本から追い出すための入管法改正案を準備していました。その内容は、難民申請中であっても送還を可能とすることや、送還を拒否する者には刑事罰を与えること等、帰国できない事情に配慮するのではなく、入管の権限をもってムリヤリ追い返すことができるように、その権限を強化するための法改悪でした。この、「送還忌避者」を一掃しようと、法務省―入管庁が組織を挙げて準備しているさ中にあって、ウィシュマさんは帰国を拒否しました。すなわち、退去強制命令が出ていたにもかかわらず、帰国意思を翻した「送還忌避者」であるウィシュマさんを、何としてでも追い帰そうとし、入管に逆らったらどうなるかという、いわば見せしめにするがごとく、入管が徹底して弾圧したことがウィシュマさんを死に追い込んだ要因です。それゆえ、ウィシュマさんは、入管法「改正」案の最初の犠牲者と言っても過言ではありません。
人を殺しておいて、その責任も認めず、それどころか、ウィシュマさんの命を奪った入管法改悪をもって、難民をも強制送還できる法律を制定しようとすることは、常軌を逸しています。戦前からの民族差別、抑圧の思想と体制を引きずった戦後入管体制を、いまこそ抜本的に改革し、入管庁の送還一本やり方針を、救済方針に転換させなければなりません。

 今回の裁判は、ウィシュマさんの死の責任が一体どこにあるのかを明らかにし、これまでの日本の入管行政の在り方の根本を問うという、きわめて重要な意義があります。
 広くて力強い労働者・学生・市民の世論をもってご遺族を支え、ご遺族の要求を実現させ、差別、抑圧のない社会の実現に向けてともに歩んでいきましょう! ご支持、ご支援、よろしくお願い致します。


第1回口頭弁論 

6月8日(水曜日)名古屋地方裁判所にて

午後2時30分開廷

 裁判が終わった後、地裁近くの桜華会館(松の間)にて記者会見と支援集会を行います。裁判の傍聴、支援集会への参加をお願い致します。



ウィシュマさん裁判に向けた入管問題を考える集会

5月29日(日曜日)オンライン(ZOOM) 

午後1時開始

 6月8日の第1回口頭弁論に向けて、市民向けのオンライン集会を開催します。日本政府-入管庁が、ウクライナ避難民の受け入れを口実にして、入管法改正案の成立の必要性を強調しているのはなぜか?ウィシュマさん死亡事件の背景にある入管法改正の動きとはいったい何なのか?入管行政の問題点を明らかにし、日本社会に暮らす者として何をなすべきなのか、みなさんと一緒に考えたいと思います。ぜひご参加ください。

※5・29集会の参加申し込みは、下記のURLからお願い致します。

ウィシュマさん入管死亡事件訴訟第一回口頭弁論報告会in明通寺
6月12日(日曜日)明通寺にて
午前11時開始

所在地  愛知県愛西市日置町本郷1248-1
アクセス 名鉄尾西線 日比野駅から徒歩5分(372m)