名古屋入管収容場でコロナ感染被害!

6月14日(火)、名古屋入管は、1日中、面会を全面的に中止しました。その理由は、名古屋入管の収容施設に収容されていた外国人が、新型コロナウイルスに感染していることが判明したためでした。
しかし、名古屋入管は、コロナ感染の事実について、ホームページやツイッター等で公式発表しませんでした。私たちSTARTは、名古屋入管に収容されている方から連絡を受け、収容場内において新型コロナウイルス感染被害が発生したことを知りました。そこで、実際に名古屋入管に赴き、面会活動の全面中止を確認すると共に、ウィシュマさん死亡事件以降、処遇部門が被収容者の関係者との対応を避け、その窓口を閉鎖してしまったために、現在、対外的窓口になっている総務課に行き、面会全面禁止措置について説明を求めました。ところが、入管側は、面会中止の理由についても、われわれの方から提起し問いただして初めて認めるという態度であり、しかも、感染状況については「調査中」との対応でした。不誠実な対応に憤りを感じながら、面会はできなくても差し入れはできるようにすることを強く申し入れました。

翌15日、入管は、午前中は差し入れを許可し、午後からは面会も通常通り再開されました。そこで、面会して、被収容者から感染被害が発生した現場の状況を詳しく聴き取りました。その後、総務課に行き、今回のコロナ感染被害についての抗議と申し入れを行い、入管側の、今回の事件に対する現実的対応と、原因究明・再発防止について問いただしました。

今回、新型コロナウイルスに感染した被収容者Aさんは、約9か月名古屋入管に収容されています。最近も、収容施設外に出ることはなかったということと、12日(日曜日)から体調が悪化し、車いすで移動しなければならない状況だったことからも、単独で感染することはあり得ません。収容施設の外部から新型コロナウイルスが持ち込まれ、感染させられた可能性が極めて高いのです。収容施設の内と外を行き来し、かつ被収容者との接触機会があるのは入管職員です。それゆえ、入管職員が新型コロナウイルスを、収容場の中に持ち込んだ可能性が極めて高いと言えます。
しかし、入管側は、「被収容者は全員PCR検査を受けて、その結果は陰性でした。職員も全員PCR検査を受けて、今のところ陽性反応は、最初に発覚した被収容者1名のみです。」と答えただけでした。
だから、なんだと言いたいのか。被収容者が新型コロナウイルス感染被害を受けたという事実があり、ならば、一体どのようにして感染したのか、誰が、いつ、新型コロナウイルスを収容場に運び込んだのか、その感染経路と状況を特定できないことが重大な問題であり、感染被害がどの程度広がっているのか等、明確な判断が下せない危険な状況にあるということではないか。一般的には、PCR検査の結果が今は陰性であったとしても、後に陽性反応に代わる可能性は大いにあり得る。では、この危険な状況に対して、入管側はどのような対応をしているのか、と問いただすと答えが返ってきませんでした。名古屋入管は、「被収容者の生命と健康を守る責務がある」のであり、新型コロナウイルスを収容場に持ち込んでしまったことを重く受け止め、その原因を徹底して究明し、感染拡大防止、再発防止対策など適切な対応をとる義務があります。
そこで、濃厚接触者は何人いるのか、その人達は隔離されているのか、と尋ねると、「調査中のため何人かわかりません。濃厚接触者の疑いがある職員は自宅待機しているはず。」とあいまいな回答しかできませんでした。STARTが被収容者から聞いた話では、被収容者全員が14日にPCR検査を受け、各自の部屋にいるよう指示を受けたが、15日には、職員から、全員陰性だったから通常業務に戻す、と言われただけだったそうです。職員の状況や、今後の対応等については、まったく説明がなかったそうです。
入管の収容施設に収容されている人達は、無期限収容のストレス等から、病気になったり、持病が悪化したりして、体調不良を訴える人が多くいます。体力、抵抗力の低下は避けられません。そのような状況下で、閉ざされた収容施設にコロナウイルスが侵入することは、非常に危険であり、絶対にあってはならないことです。しかし、入管側は、危機感、責任感も伝わってこない型通りの対応であり、しかも、PCR検査の結果、問題ないと言うだけで、問題の性格や状況が正しく理解されているとは思えませんでした。
返答に窮した入管職員は、「資料を調べてきます」と言って席を外しました。しばらくして戻ってきた職員が言ったことは、「本庁に問い合わせたところ、濃厚接触者の数の把握はできているが、公表する対象になっていないので答えられません。」というものでした。

去年、3月6日に亡くなったスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさんは、嘔吐を繰り返し、吐血までした状態に対して、胃カメラ検査をしましたが、問題なしと判断され、2月15日の尿検査の結果では、飢餓状態を示す数値が出ていたにも関わらず、名古屋入管はその結果をもみ消し、点滴1本打つことなく、ウィシュマさんを詐病扱い(病気のふりをしているという判断に基づく対応)をもって放置した結果、死亡させてしまいました。しかも、死亡事件後、入管庁-名古屋入管は、口では被収容者の命や健康を守る責務がある、再発防止を徹底すると言っていますが、実際はまったく違います。現場は、ウィシュマさんが死亡した時と本質的には何も変わらず、「検査したが問題なし」を繰り返し、感染者を出したことに責任感、危機感がないどころか、情報を隠蔽し、自己保身、責任逃れしか考えていません。

このような被収容者の立場に立たない処遇では、第2、第3のウィシュマさんが生まれかねません。今回のコロナ感染事件に関して、STARTとして申入れた3点(①速やかに状況調査と原因究明、再発防止策の検討を行い、1週間以内にその結果を回答すること。②貴局は、貴局収容場で新型コロナウイルス感染が発生した事実について、公表していない。貴局のTwitterアカウントで面会中止の連絡をしているのみである。新型コロナウイルス感染の事実を隠蔽し、責任逃れを図るようなことはあってはならない。速やかに情報を公表すること。③被収容者については、原則的に全員を仮放免させること、体調不良者は本人の希望があれば入院、治療を受け付けること。)について断固追求していきます。