【ウィシュマさん死亡事件第5回裁判報告】5時間分のビデオ 法廷で上映決定!

ウィシュマさんのビデオ5時間分が、公開法廷で上映されることが決まりました!

 2023年2月15日、名古屋地裁にて、名古屋入管ウィシュマさん死亡事件国家賠償請求訴訟の第5回口頭弁論が行われました。今回も90人ほどの市民・学生が傍聴に駆けつけ、傍聴席は満席となりました。傍聴にかけつけてくださった皆さま、ありがとうございました。


今回の裁判までの経緯

 原告であるご遺族は、提訴時から、ウィシュマさんが収容されていた部屋の監視カメラのビデオ映像全て(295時間分)を証拠として提出することを、被告である国側に求めてきました。国側は訴状の内容に対して全面的に争う(否認する)姿勢を示したものの、否認の証拠を提出せず、裁判がまともに進まない状況が続いていました。しかし、前回の口頭弁論でやっと、国側が編集した5時間分のビデオが提出されることが決定しました。提出された5時間分のビデオについて、原告側は、裁判の公開は憲法で定められており、なぜウィシュマさんが亡くなったのかを知るための重要な証拠であるとして、公開の法廷での上映を求めていました。
 ところが国側は、今年の1月17日に行われた進行協議で「保安上の理由」など理由をあげ、法廷での上映は「必要ない」と主張したのです。

第5回口頭弁論の内容

 今回の弁論で主要な論点となったのは以下の2点です。
①慰謝料について
 被告国は、ウィシュマさんは送還後に母国スリランカで居住することが予定されており、またご遺族も今後スリランカに居住することが予定されているならば、精神的苦痛を慰謝するために必要な金額についても、日本とスリランカの物価水準、所得水準などの経済的事情の違いを考慮するべきだと主張し、原告の請求する慰謝料額は「高額にすぎる」と言っています。
 被告の主張に対し、原告からは、「死亡慰謝料は、被害者遺族が実際に費消することで満足を得て慰謝されるというものではない。」「慰謝料の損害の填補という観点から検討すると、精神的苦痛はあらゆる人間において共通であり、生活基盤がいずれの国にあるかによって精神的苦痛に差異があるとすることは不合理な差別というほかなく、許されない。」と反論しました。
 ウィシュマさんの妹であるワヨミさんは意見陳述で、「これは、大変な不正義だし、明らかな差別だと思います。日本では、金持ちと貧しい人で、命の重さが違うのですか?人の苦しみや哀しみの深さは、金持ちと貧乏な人で違うのですか?」「私も、あなたも、人間です。命の重さにも、苦しみ、悲しみの深さにも、違いはありません。」とおっしゃっていました。

②5時間分のビデオの上映に関する国の意見書「原告の『訴訟進行に関する申し入れ』に対する意見書」について
 国側は保安上の理由、ウィシュマさんの名誉・尊厳を侵害する、例え職員の顔が見えないよう編集されていても、記録された職員の声で職員を特定できる、職員の身柄が拘束されたり、暴行を受けたりする蓋然性がある、などと理由をあげ、上映を拒否しました。
 しかし、この5時間分のビデオ映像は、裁判所で手続きをすれば誰でも閲覧することができるようになっています。そもそもビデオは国のものではありません。ウィシュマさんの生前から亡くなった後まで、尊厳を踏みにじっているのはどちらでしょうか?
 裁判の中で弁護団から「真相究明するため積極的に裁判進行に協力する気はないのか」「ここにいる傍聴人が職員の身体を拘束し、暴行を加えるということか、これが法務大臣、国の意見でいいのか」と追及しましたが、国側は「意見書の通りです」などと答えるだけでまともな回答はできず、傍聴席からは失笑や非難の声がありました。
 そして、裁判後の進行協議で、今後の裁判で傍聴者にも見える形で、原則5時間分すべての映像が上映されることになりました!3月に行われる進行協議で上映の日程について検討されることになっています。

NHK「入管施設で死亡 スリランカ人女性の収容中の映像 法廷で上映へ」 

訴訟資料はこちらから

記者会見、支援集会

 ウィシュマさんの妹であるワヨミさん、ポールニマさんは、裁判後に行われた記者会見や支援集会で「すべての日本人にビデオをみてもらいたい」「5時間分のビデオが上映されるようになって本当に良かったが、残りの290時間も上映できるように頑張っていきたい」「皆さんが関心をもって圧力をかけたおかげでここまでの結果になった。真相究明するために、なぜ姉が見殺しにされたのかは295時間の中にある」と、これからも真相究明に向けて闘っていく意思を表明されました。
 これに対して、全国から集まった学生や市民から、今後もビデオの全面開示に向けて連帯する意見表明や、また裁判に駆け付けた仮放免者からは、私たちが入管で体験したことをビデオの中で見てほしい、という意見が挙がりました。5時間分ではあるものの、ビデオ上映が決定したことはこれまでの運動の成果であり、ご遺族の願いである真相解明に向けて、これからも全国的により強力な世論を作り上げていくことを支援集会で確認しました。

 ご遺族の想いを踏みにじるような国側の態度、差別を決して許さず、ウィシュマさん死亡事件の真相解明、再発防止に向けてご遺族とともに声をあげましょう!引き続き、ご支持、ご支援をよろしくお願いします。

支援集会の様子


〇全国一斉アクションについて

 今まさに国会に提出されようとしている入管法改正案を廃案に追い込むため、STARTも呼びかけ団体となっている「入管の民族差別・人権侵害と闘う全国市民連合」主催で、2月23日に「2.23入管法改悪反対全国一斉アクション」を開催します。①入管法改悪反対②仮放免者に在留資格を、またウィシュマさん3回忌に向けて、全国9か所でアクションを起こします。
 政府は、これ以上入管の権限を強めるなという世論の反対を受け、2度も成立を実現できなかった入管法改正案をそのまま再提出し、成立させようとしています。ウィシュマさん死亡事件の真相解明もされず、事件の責任をいまだ誰もとっていない状態にも関わらず、入管の権限を強める法案を成立させようなど言語道断です。
 これまでも、強力な反対の世論をもって、改正案の提出を阻止してきました。法務省―入管庁が今回の全国アクションに注目していることは間違いありません。法務省―入管庁の横暴を決して許さず、日本で安心して生活することを望む当事者の要求の実現にむけ、一緒に声をあげましょう!
 飛び入り参加可能です。ぜひアクションにご参加ください!

名古屋でのアクションの詳細はこちら
入管の民族差別・人権侵害と闘う全国市民連合のホームページはこちら