【ウィシュマさん裁判第21回】裁判報告 新美医師の証人尋問二回目が行われました!
12月11日にウィシュマさん名古屋入管死亡事件国賠訴訟第21回口頭弁論が行われました。12月4日に引き続き、当時名古屋入管で非常勤医師としてウィシュマさんを診断していた新美医師の証人尋問の2回目が行われました。
12月4日の裁判報告はこちらからご覧ください。↓
新美医師の尋問の1回目である12月4日は、被告・国側の尋問の後、原告側が15分尋問を行っています。2回目である今回は、前回の続きとして原告側の尋問70分を最初に行い、その後双方から最終尋問を行いました。
原告側からは主に、ウィシュマさんを診察していた期間、新美医師が何を根拠にどんな判断をしたのか尋問を行いました。
新美医師は、2021年1月28日、2月4日、2月18日、2月22日の計4回ウィシュマさんを診察しています。
〈新美医師の証人尋問について〉
原告代理人からは、主に以下の点について新美医師に尋問を行いました。
・診察時の様子について
新美医師がウィシュマさんを始めて診察した1月28日の時点では、足の痛み、しびれを訴えていたことは診療録に記載しており、医師本人も認めていますが、2月4日以降の診察に車いすで来たかどうかは「記憶していません。」と述べています。当時の名古屋入管の職員の日誌には、「2月4日の庁内診療に車いすで赴いた」と記入されていますが、それでも新美医師は全く記憶にないという一点張りでした。
・点滴の判断ついて
新美医師は、2月18日の診察前に2回目の尿検査の結果が、ケトン体3+、タンパク質3+、ウロビリノーゲン3+、という一般的には重篤な飢餓状態を示す数値であることを確認しています。それでも点滴の判断をしなかったのか、という問いに対しては、「そういうことならそうかもしれない。しかし、自分の判断と全く関係なく点滴の判断はできた。」「入管内には点滴を打つ体制が整っておらず、点滴は外部病院で行くことになるので、自分に点滴の判断をする権限はない。入管職員が外部病院に連れていくので、入管の方で判断する人がいると思います。」と答えています。また、2月23日にウィシュマさんが入管職員に点滴を訴えていたという報告を受けたかどうかは、記憶にないと述べています。
・報告機能について
ウィシュマさんの診察を行っていた当時、診察を受ける被収容者の情報交換の場は、看護師と週2回の診察が始まる前に行っていました。しかし、週2回・計4時間の診療時間外であるウィシュマさんの日常的な様子について看護師からの報告されていたのかは「記憶にないです。」と発言しています。当時の看護師記録には「ここ数日、飲み物を飲んでも吐き気が持続している」という報告がされていますが、新美医師はこの記録は見ていないと述べています。また、原告代理人からウィシュマさんの体調が悪化している客観的証拠として、筆跡が日に日に乱れていく被収容者診療申出書を示しましたが、「申出書を提出したという報告は聞いていないし、申出書自体いずれも見たことない」と述べています。
現在は入管の幹部と医師の間で定期的にカンファレンスが行われていると報道されているが、実際あるのかという質問には「知りません。当時は入管幹部との情報交換はありませんでした。」と答えています。
尋問の最後に、原告代理人から裁判に出席しているウィシュマさんの妹のポールニマさんへ伝えることはあるかと問うと、新美医師は「大変、気の毒なことに思う。哀悼の意を表したい」と述べました。
前回の被告・国側からの尋問は、事前準備していたかのように淡々と答えていましたが、うって変わって、今回の原告からの尋問は、診療録に書いていることは答え、書かれていないことは「記憶にありません。」と答える、という繰り返しでした。
新美医師の証言は、診療録に書いていないことは「記憶にありません。」書いたことについても「あったかもしれない」という曖昧な回答ですが、車いすで診察に来るほどの状態であったことや、尿検査の結果など、客観的な事実は否定しようがありません。新美医師が入管の庁内医師としてやらなければならないことをやっていないという点で責任があることが明らかになりました。さらに重要なのは、新美医師個人の責任ではなく、入管の責任であることが浮き彫りになったという点です。新美医師の「ウィシュマさんから点滴の要請があったことは看護師から報告受けていない」「私には点滴の判断をする権限はなく、入管が点滴を打たせる判断をして外部病院に連れていくことはできると思う」という発言から、入管組織の報告制度、判断の問題が浮かび上がってきます。ウィシュマさんが収容されていた部屋の監視カメラの映像には、ウィシュマさんが職員に点滴を求めている様子が映っています。ウィシュマさんの必死の訴えを、入管の誰がいつ報告をして、誰がウィシュマさんの訴え無視したのでしょうか?
現在、日本社会の中では外国人への差別意識、排外主義が強まっています。この状況に流されて、ウィシュマさんが亡くなって以降も続く入管による差別を許してしまっていいのでしょうか。政府、行政による差別を日本に住む私達が見逃してきたことで、ウィシュマさんを死に追いやってしまったことに罪の意識を持ち、二度と同じ事件は繰り返してはならないという立場から声を上げることが必要なのではないでしょうか。
真相究明・再発防止を目指し、客観的な証拠であるビデオの全面開示と当時ウィシュマさんへの対応、または対応の判断をした入管幹部・職員、看護師の尋問は、ご遺族がずっと求めているものです。ご遺族の望みを実現する市民の運動を作っていきましょう!
次回は被告協力医である野村医師の証人尋問が行われます。裁判が佳境を迎えている中、ご遺族にとって支援はとても心強いです。ぜひ裁判傍聴支援をよろしくお願いいたします。
最後に、ウィシュマさんの妹のポールニマさんが裁判後、支援集会で述べていた内容について紹介します。
自分がショックを受けたのは姉がなくなったことについて「大変気の毒だと思います」だけで、謝罪は一切なかったことです。一番びっくりしたのは、新美医師は姉が車いすに乗っていたかどうか覚えていないと述べていたことと、点滴は自分に権限はないがしようと思えば外部病院に頼むことはできると述べたことです。新美医師を2回証言してもらうために読んでいるが、自分に都合のいいことばかり言っており、責任逃れであることは明らかになっています。新美医師の発言を聞いて今思うのは、医師だけで終わらせず、入管の幹部、看護師も呼んで発言してもらった方が、姉に何があってどのようになくなったのか、真相を究明するためには重要なことだし、必要な事だと思っています。
〈裁判期日〉
12月24日(水) 被告協力医(野村医師)の証人尋問
1月14日(水) 原告協力医(今川医師)の証人尋問
1月28日(水) 原告協力医(下医師)の証人尋問
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