6月2日 名古屋入管への申し入れ
6月2日、名古屋入管に対し、3月6日の死亡事件の真相解明、再発防止の徹底化を求める申入れを行いました。名古屋入管として、亡くなった女性が収容されていた居室の監視カメラの映像等の開示を本庁に要請し、真相解明、再発防止に向けた検討を進めること、また、そのような趣旨に基づく局長及び各部署の責任者同席の支援者との話し合いの場を早急に設けることを申入れました。
死亡事件から3ヶ月が経とうとしていますが、未だに死因も死に至る経緯も明らかになっておらず、再発防止の検討は全く進んでいません。実際に、名古屋入管の収容場での処遇の問題や、杜撰なコロナ対策から発生する問題が後を絶ちません。
申入書では、この間の名古屋入管の問題として、以下の2点を取り上げています。
(以下、太字部分は申入書より抜粋)
(1)体調不良の被収容者に対する対応
ナイジェリア国籍の被収容者Aさんは、5月26日の夜から食事を摂ることが出来ない状態になり、水も飲めない、飲んでも吐いてしまう状態になり、5月28日には外部病院で精密検査を受け、点滴を3本(脱水症状用 1本、痛み止め2本)打っている。しかし、その後、入管内に戻され、点滴治療もせず、容態が変わらないことを理由にして5月31日に、本人の意思を無視して、無理矢理居室を単独室へ移動させた。Aはスリラン カ人女性が単独室で死亡したことや入管がビデオ映像を開示しないことを知 っているので、単独室へ行くことに恐怖を感じていた。当日、フリータイムが 始まる前に、Aの居室に20人ほどの職員が押しかけ、単独室 への移動を拒否するAに対して、職員が、両腕を抱え何度も胸 を叩き、腕や足を思い切り引っ張ったりして運んでいったため、Aは移動中に意識を失ってしまった。気付いたら単独室に横になっていた そうである。
連れていかれた単独室は4畳くらいの狭い部屋で、ベッドも布団もなく、無理矢理連れ出された時に職員から体のあちこちを叩かれたり、引っ張られたりしたために、体中が痛む状態で、硬い畳の部屋で毛布3枚しか与えられず放置された。フリータイムもなく、シャワーや洗濯が必要な時はインターホンで職員を呼ばなければならないが、車いすに乗っているAはインタ ーホンに手が届かない。窓はガラス張りで、監視カメラが付いていてトイレを 使うときも監視されている。ドアの近くの穴も塞がれているため、大きな声を出しても外に聞こえない部屋である。
職員の作成した書類には、「(Aが)暴力を振るった」と書か れており、5日間は単独室にいなければならないと言われた。現在も食事は食べられず、のどの痛みを抑えるために水を少し飲んでいるが、時折水も吐いて しまう状態にある。
Aは、ストレスにより食事が食べられなくなり、体調が悪化し、外部病院で点滴を打っている「体調不良者」である。さらに、スリランカ人女性の死亡事件を受けて、単独室に行くことに恐怖感を持ち、移動を拒否する人を無理矢理移動させ、そのうえ、抵抗したことをもって「暴力を振るった」 として懲罰を与える等、食事も水も摂取できない状態の被収容者に対して、配慮することなく管理、監視することしか考えていない。まさに、「詐病」扱いであり、亡くなったスリランカ人女性と同様の扱いをしている。
(2)審判部門におけるコロナ感染者への対応について
5月28日、午前9時過ぎ、3階の審判部門に、中国人の男性が、ビデオ通話で女性と会話をしながら入って来た。女性が電話口で男性に対し「あなた はコロナだから家にいないとダメ」と言っている声を、付近にいた人が聞いている。その後、受付けで、2人の職員が男性に対して「だから、治してか ら来てください。あなたはコロナなんだから!」と、3回も、部屋にいる全員 に聞こえる大声で怒鳴っていた。男性は何も言わずに、審判部の部屋から出て、 エレベーターに乗って降りていった。職員から、その場にいた人たち(10人 ほど)に対する説明は一切なく、受付付近をアルコール消毒しただけであった。 この件に関して、同日の午後、STARTへの通報を受けて、われわれが審判 部門の職員に問いただしたところ、「コロナ感染者なんて来ていません」と答えるのみで、まともに取り合おうとしなかった。
コロナ感染者に対して隔離措置もとらず、検査もせず、無理矢理追い返すの みで、その場で職員の大声を聞いた人達に何の説明もせず、支援者からの問い合わせにはまともに答えようとしない。これはコロナ対策としてあまりにも 杜撰、無責任ではないか。
名古屋入管は死亡事件の現場であり、最終報告提出に向けた調査を行なっている最中にあるにも関わらず、病院で点滴を打った被収容者を、ベッドも布団もない部屋に無理矢理連れ出し「懲罰」を与える、コロナ感染者を隔離、検査もせず怒鳴りつけて帰らせるなど、その対応や態度は、死亡事件の真相解明、再発防止に向けて真剣に取り組んでいるとは思えず、まともな最終報告書など出せるはずがありません。
被収容者は、次は自分が死んでしまうのではないかと強い不安、ストレスを抱えています。事例の1点目にあげたAさんは、単独室に移動した後「スリランカ人がなぜ死んだのか、はっきりした」と話し、6月2日の面会時には「(自分は)死ぬ?」と、こちらに問いかけてきました。
被収容者にとって、死亡事件の真相を明らかにし、再発防止策を徹底化することは他人事ではなく、命に関わる問題です。名古屋入管に収容されている被収容者の有志25名から、死亡したスリランカ女性の居室のカメラ映像を開示することを求める署名も提出されており、申入れの際に合わせて提出しました。
STARTは、引き続き、現場で何が起こっているのか、実際を社会に伝えながら、死亡事件の真相解明、再発防止を徹底して追及していきます。
追記:(1)のAさんは、6月4日(金)仮放免許可になり、外に出ました。
(個人名の部分は黒塗りにしています。)
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