真相究明の抗議申し入れ(4/7)

4月7日、名古屋入管に対して、3月6日に起きたスリランカ人女性の死亡事件に関して、早急に今回の事実関係を明らかにするよう申し入れを行いました。
(下に提出した申入書を載せています。) 

本人も、我々支援者も、再三再四訴えたにもかかわらず、入管はなぜ検査と診療しか行わず、治療をしなかったのか。体重減少や衰弱が進行していることが明らかな状況の中で、応急的な治療さえ行わなかったのか。3月4日の外部病院での診療において、せめて点滴を打っていたら、死亡は避けられたのではないか。このような疑問が、多くの心ある人々から出されています。今回の申し入れで、我々はこのような疑問の解決に向けて、一歩踏み込んで入管を追及しました。
具体的には、
①入管は、「医師の指示に従い、適切に対応していた」と言っています。しかし、入管における医療のあり方、入管と医師と患者(被収容者)との関係は、一般の外来診療におけるような医師と患者との関係とは違い、入管が、いわば医者と患者を支配しているような関係にあり、治療目的ではなく、収容継続を目的として医療が使われています。被収容者が外部病院で診察を受けるときは(局内の場合はなおさらのこと)、入管から病院、医師に対して患者の情報が提供され、その情報を踏まえて診察、検査、治療が準備されます。また、その結果についても、医師は入管に対して報告義務を負っているのです。患者が、最善の医療を受けられる権利は、著しく侵害されているのです。もし、入管が誤った判断や情報を提供したら、医師は先入観を持って診察することになり、最善どころか、適切な診療さえできなくなります。それゆえ、入管が「医師の指示に従い、適切に対応していた」等とは言えない関係、医療環境が前提になっています。
②我々は週2回、多い時は週4回のペースで、亡くなったスリランカ人女性と面会をしていました。それゆえ、彼女の身体的、精神的状況の変化が、比較的系統的に把握できる立場にありました。そこから見て、明らかに体重減少と衰弱が進んでいて、精神的にも不安定になっていく状況を認識することができました。ですから、面会のたびに、入管の処遇部門や審判部門に対して、点滴投与、入院治療や、即時仮放免を申し入れていました。1回目の仮放免許可申請(1月4日受理)では、その理由に、病気治療をあげていません。なぜなら、元気だったからです。ところが1月上旬頃から食欲が減退し、中旬以降、嘔吐を繰り返すようになり、仮放免許可申請の理由にそぐわない状況が起きてきました。1月28日には吐血まであり、即刻入院、さもなくば即刻仮放免を要求したのです。ところか、入管は仮放免を不許可にし、局内外の病院での診察、検査をやりながら、一度も(応急的なものも含めて)、治療をしていません。これでは「適切に対応していた」と言えないのではないか、というのが我々の見解です。
このような見解について、1週間以内に、入管が回答するよう申し入れました。

ではなぜ、入管は、応急的な治療さえ、点滴1本さえ投与しなかったのでしょうか。我々は、入管が、女性が仮放免になるために病気のふりをしていると判断していたのではないかと考えています。被収容者に対して疑いの目を向け、信用していなかったということです。実際にスリランカ人女性も、面会時に「(職員は、私が)嘘を言ってると思ってる」と話していました。
誰が見ても衰弱し危険な状態にあり、本人も命の訴えをしているのに、それを信用されていない、嘘だと思われている。これが彼女にとってどれだけ苦痛だったか。もし入管が詐病だと判断し、その判断のもとから適切な医療を受けさせず、女性を死に至らしめたのだとしたら、それは決して許されることではありません。

今回の事件に関して、入管は現在「調査中」としていますが、入管には収容主体責任として被収容者の健康や生命を守る等の責任があり、この責任義務を果たすことを前提に収容権が与えられています。その収容施設において、入管の保護監督下にあるにも関わらず、ずっと体調不良を訴えていた被収容者が死亡したことについて、未だに公式見解として謝罪はありません。まるで責任を逃れるかのような発言を続けている、今の状況は許されないことです。
本来であれば、早急に今回の死亡事件がなぜ起きたのかを見直し、二度とこのようなことが起きないよう医療対応等の改善策を打ち出し、公表すべきです。 それをしないで、現在の入管に、収容権を認める訳にはいきません。このままでは、また被収容者の命を奪いかねません。

申し入れ後面会を行いましたが、名古屋入管には今も体調不良を訴えているのにも関わらず薬しか出されず、適切な治療を受けることができていない被収容者がいます。彼らは次は自分が死んでしまうのではないかと不安を抱えています。
我々STARTは現在も入管に収容されている当事者の命を守るため、今回の死亡事件の真相究明、現在の入管の医療対応の改善を強く訴えていきます。