4月7日付申入書に対する回答を求める申入れ(4/16)
4月16日、名古屋入管に、4月7日の申入れ(詳細は前回の記事にあります)に対する回答を求め、再度申入れを行いました。
名古屋入管の回答としては、「今の段階では、(死亡事件について)中間報告が出ているが、事実関係しかでておらず、現在その対応がどうだったのかの検証が行われている。今後調査を継続し、最終的な調査結果を踏まえた上で、4月7日に申し入れた点については対応していきたい」という内容でした。
さらに、名古屋入管は中間報告書の内容について間違いないと思っているのかと問うと「事実として認識している」と回答がありました。
この点について、中間報告書は事実を正確に反映しておらず、入管にとって都合の悪い事実が隠された恣意的な内容である、というSTARTの見解を伝え、以下に示す具体例を挙げながら、入管の事実認定そのものが誤りであることを指摘しました。
①入管側の不適切な対応について。
STARTが死亡した女性と面会する中で、本人から「トイレへの移動時に転倒し、職員に助けを求めたにも関わらず、職員は助けることなく、部屋の外から自力で起き上がるよう声を掛けられた。結果的に、職員ではなく同じ収容区の被収容者に介助してもらった」という話を聞きました。STARTは当時、この点について処遇部門に抗議、申入れを行っています。しかし、中間報告書では「(STARTの申入れ後、)処遇部門幹部が看守勤務員に対し確認を行ったところ、トイレ使用時の転倒という事実はなく、介助も適宜行なっているとの説明であったが、名古屋局がこうした内容を支援者に伝えることはなかった」(中間報告書本体p.11)と報告されています。
さらに、女性が床に倒れた際、職員が2人がかりで女性をベッドに戻そうとしたが、2人では抱きかかえることができず、女性をそのまま床に寝かせた、という話も女性から聞いていますが、この事実は中間報告書には一切載っていません。
このような、体調を崩し、衰弱している女性への入管の処遇が杜撰であることを示す事実については、中間報告書では明らかにされていません。
②1回目の仮放免許可申請の不許可について。
女性は、2回の仮放免許可申請を行っており、1回目は不許可、2回目は死亡した3月6日の時点で結果が出ていませんでした。
1回目の仮放免許可申請の主な理由として、収容以前に元交際相手からDV被害を受けており、収容中の女性のもとに「スリランカに帰ったらあなたに罰を与える」などと書かれた手紙が届いたため、本国に帰ることができないことを挙げていました。
中間報告では、この申請に対する不許可処分の理由として、「A(女性)が不法残留となった後に一時所在不明となっていた経緯や、Aには面会に訪れていた支援者を除いて本邦に身寄りがなく、所持金も僅少であったことなど」(中間報告書本体p.20)と記載されており、女性の「帰国できない」という訴えについては全く考慮されていません。また、仮放免の保証人は支援者が引き受けており、仮放免後の住所も決まっていたことから、「本邦に身寄りがない」という判断は間違っています。さらに仮放免後は、保証人及び支援者が面倒を見ることになっており、本人の所持金が少ないことは、仮放免の不許可の理由にはなりません。さらに、仮放免許可申請を行った1月4日から、不許可処分が出るまでの1ヶ月の間で、女性の体調不良は深刻化していました。審査期間中、STARTから、仮放免許可申請の審査を行う審判部門に対して、女性の体調は悪化しており入院・点滴の必要があること、入管で治療をしないのであれば、すぐに仮放免許可を出すことを訴えていますが、審査の際、女性の体調悪化についてどのように評価、判断したのか、一切触れていません。
中間報告書に書かれている不許可理由は全く正当なものとは言えません。
③本人からの点滴や入院の要求について。
中間報告書では、度々、本人からは病院での診察や点滴の要求がなかったことが書かれていますが、2回目の仮放免許可申請理由書には、「私は、外の病院に行って点滴を打ちたいですが、入管は連れて行ってくれません」、「外に出て検査を受けて、安心して生活したい」と、本人の要求が書かれています。外部病院への通院や点滴を受けることについて、公的な文書をもって女性が要求していたにも関わらず、この要求に対して入管が検討を行った形跡が全く見えません。
また、女性は、医師による診察を数回受けていますが、ある診察の際に、医師から点滴や入院の話がされたが、入管は時間がかかることを理由に拒否した、という経緯がありました。この点について、中間報告では「この診察の際、Aから医師に対し、点滴や入院の求めはなく、同医師から点滴や入院の指示がなされたこともなかった」と全面的に否定しています。
4月16日の申入れ時には、主に上記3点について指摘しましたが、中間報告書の内容は、この3点以外にも、我々が把握していたことと異なる内容が「事実経過」として記載されています。
申入れの際に、名古屋入管側からは、「再発防止に向け取り組んでいく」という発言がありましたが、中間報告の内容からして、入管は自分たちにとって都合の悪い事実を隠し、責任逃れをしていると言わざるを得ず、このような態度、対応では、再発防止を徹底し、被収容者の命と健康を守る処遇へと改善することができるとは到底思えません。申入れでは、死亡事件に対する態度を改め、真相究明と再発防止に向けて適切に対応することを要求しています。
被収容者は自らの意思で病院に行く、医者を選ぶことはできません。入管は被収容者の自由を奪う収容権が認められている代わりに、被収容者の健康や命を守る義務があります。
また、入管は、個人の事情を考慮せず、入管法違反者は国から追い出す方針をとっていますが、今回死亡したスリランカ人女性も、帰国できない事情を抱え、日本在留を望んでいたことからして、入管の「送還一本やり」とも言える方針の犠牲者です。現在国会で審議されている入管法改正案も、送還忌避者に刑事罰を与えるという、入管の送還方針をさらに強化する内容としてありますが、1人の人間の命を奪っておきながら、未だに遺族に対する謝罪もないばかりか、責任逃れをするような入管、法務省に、新たな権限を与えることは到底許されません。
我々は今回の死亡事件の真相究明、再発防止を訴えるとともに、入管法改正案に対し、強く反対していきます。
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