中間報告からの抜粋
(以下、中間報告書より抜粋)
ク 2月23日から2月28日までの経過
Aは,この時期,ベッドに横になっている状態が多くなり,看守勤務員 に対し,食事及びトインの介助を求めたほか,面会室等への移動の際には 車椅子を使用していた。
そのため、看守勤務員が,二人一組となって,Aの要望を確認しながら 食器をAの口元に近づける, Aの体を抱えながら居室内でベッドからトイレまで移動させる,Aの体を抱えて車椅子に乗せるなど,Aの食事・トイ レ等の介助をしていた。なお、2月23日 (火・祝)にはAがトイレへの 介助を求めた後にトイレへの移動も拒んだことから,おむつが使用されたが,看護師の指導により,2月24日(水)にはおむつは外された。
なお,Aは,このような状態であっても、意思疎通に支障はなく,看守勤務員に対し自らの要望を伝えていた。
このような状況の中,看護師は,前記のとおり2月23日夜にAがおむつを使用したとの情報に接し,Aの意欲の向上,ひいては食欲や体力の回復を図るため、2月24日以降の各平日に,1回当たり30分程度のリハ ビリテ-ション(深呼吸・腹式呼吸,左右上肢の運動,背中・下肢のマッ サ-ジ;各関節の屈曲・伸展等)を行い,その際にAの体調確認を行っていた(3月4日は面談のみを実施し、丁病院精神科医師に対し,自分の話したいことをしっかりと伝えるようにとの指導を行った。)。
また,Aは,2月22日から2月28日 (日)までの間において,2月 22日に頓服薬として処方されたイノラス配合経腸用液(経腸栄養剤)1. 87.5mlを同日,23日(火),24日 (水),26日(金)及び28日に各1回ずつ服用したほか,引き続き,支給されたOS-1を連日摂 取するとともに,購入品等である炭酸飲料, パウンドケ-キ,りんご等の. 飲食物を摂取することがあったほか,23日以降は官給食のかゆや副食の 果物・惣菜の一部も摂食するようになった。
さらに,Aは,2月28日以降,定時薬として処方されていた薬(メコバラミン錠0.5mg(末梢性神経障害治療剤)及びランソプラゾ-ル) D錠15mg(消化性潰瘍治療薬))も処方のとおりに服用するようにな った(別紙4-1参照)。
このように,看護師によるリハビリテ-ション及び体調確認が継続して 行われ,Aの摂食状況や処方薬の服用状況に改善の傾向がみられるようになり,Aからの受診申出や庁内診療室の嘱託医師からの更なる受診指示もなかったため,2月22日の甲医師による庁内診療以降,丁病院精神科の受診予約済みであった3月4日までの間は、庁内診療室又は外部病院での 診療は行われなかった。
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(5). 3月1日から3月4日までの経過
ア 3月1日から3月4日までの経過 (外部病院での診療実施状況を除く。)
この間,Aが食事,トイレ,歩行等に看守勤務員の介助を求める状況に変わりはなかった。
このため、看護師によるリハビリテ-ションも継続して実施されていた。 そうした中,Aは,3月1日 (月)頃から,看護師に対し,「頭の中が電気工事をしているみたいに騒がしい。」旨を訴えるようになった。このようなAの健康状態の推移を考慮した名古屋局処遇部門の判断により,3月3日(水),Aに対し,臨床心理士によるカウンセリングが行われた。
また,3月3日に支援者と面会した際,Aは,担当からAの体が重いと言われた旨などの不満を訴えた。面会終了後,支援者から,処遇部門に対 し,これらの点について抗議がなされた(今回の調査において関係職員に確認したところ,一様に,故意にそのような言葉を述べることは考えられないが,介助のため身体を持ち上げる際に被収容者の重量が負担となるこ とは事実であり,そうした際の職員の反射的な反応をAが重いと言われたと受け取ったのかもしれないとのことであった。)。
この時期には,Aは,看守勤務員の介助を受けながら官給食のかゆの一部(少ないときは数口から4分の1程度,多いときは3分の2から全量に近い程度)を摂食し,時には官給食の副食の果物や惣菜も口にしていたほか,随時,支給されたOS-1を飲用したり(この時期のOS-1摂取量 は1日当たり200ml~300ml程度),購入品等であるバナナを摂取したりしており,夜間に購入品であるピ-ナッツバタ-やビスケットの封を自ら開けて摂食することもあった。
また,Aは,頓服薬として処方されたイノラス配合経腸用液(経腸栄養剤)187.5mlを3月2日,3日及び4日(木)にいずれも1回ずつ服用したほか,この時期,Aは,3月4日の外部病院での診療時(後記イ参照)に処方された抗精神病薬等を含め,定時薬である処方薬をいずれも処方のとおりに服用していた(別紙4-1参照)。
この時期のリハビリ及び体調確認に基づいて看護師が作成したメモには,「食事は、少しずつだが,改善傾向。固形物を摂取後,嘔吐もしていない。」(3月1日),「毎日ごく軽度ずつではあるが,意欲が増えてきている。」(3月3日)といった記載がある(別紙2参照)。
イ 3月4日の外部病院診療実施状況
Aは,2月18日の宇内診療時における甲医師の指示に基づき,3月4 日午後,名古屋市内の丁病院(総合病院)精神科を受診した(シンハラ語 通訳が同行)。
その際,Aは,丁病院精神科の医師に対し,幻聴,不眠,筋弛緩等の症状を訴えたが,頭部CT検査の結果,異常は見当たらなかった。
丁病院精神科の医師は,Aが訴える症状の出現時期が,Aが帰国希望から日本への在留希望に転じた時期と合うことから,例えば,病気になることにより仮放免をしてもらいたいとの思いが作用するなど心因性の障害を生じさせている可能性があるとして,「身体化障害の疑い」と診断し,ク エチアピン錠100mg(抗精神病薬,就寝前に1回1錠)及びニトラゼ パム錠5mg(睡眠誘導剤,抗けいれん剤,就寝前に1回1錠)を処方し, 3月18日に再診するよう指示した。.
死亡前日及び当日の経過
(1) 死亡前日(3月5日)の状況
Aは、3月5日 (金)の日中,脱力した様子(前日から服用を開始した抗 .. 精神病薬の影響によると思われるもの)が続いていたが,看守勤務員の介助を受けながら,着替えや摂食, 処方薬及び常備薬の服用をすることはできた。
また,午後2時30分頃から看護師によるリハビリテーションを受けた際には,常時声を発し、首を動かすなどした上,「お腹すいた。」などとも発 言した。
なお,この日の午前,支援者がAとの面会の申出をし、看守勤務員がAに対しその旨を告げたが,Aは眠い旨述べて動こうとせず,面会の実施に至らなかった。
看守勤務日誌等によれば、3月5日におけるAの主な動静等は、次のとおりである。
午前7時53分頃
看守勤務員から朝食の摂食を促されたが、眠いので食べたくない旨述べた。
午前9時18分頃
看守勤務員から入浴、歯磨き等を促され、「何もしたくない。」と述べたが、着替えをすることには応じたため、看守勤務員4名の介助を受けて、着替えをした。
午前10時41分頃
看守勤務員の介助を受けて、朝食として、かゆ2口をEOS-1とともに摂取した。
午前11時1分頃
処方薬(メモバラミン錠0.5mg(末梢性神経障害治療剤)1錠)及び常備薬(新ビオフェルミンS錠(整腸剤)3錠)を服用した。
午後2時30分頃~午後3時15分頃
看護師によるリハビリテーション(上肢下肢他動運動及びマッサージ等)を実施。
看護師によるリハビリテーションの状況に関するメモには、この時のAの様子について以下の記載(原文のまま)がある。
「(メンタルのドクターに話たいことを言えた?)言えた。(こちらの問いに、頷くことが多い。発語小さい声)お腹すいた。(2回発する。)」
「昨夜の精神薬が残っている様子で、脱力している。眠っているわけではないが、常時首を動かせている。話しかけると頷いたり、小さな声で返答する。排泄や食事など、今後も介助必要。転倒転落や誤嚥窒息注意。対応職員数が必要。また、流動食を促す。深呼吸や腹式呼吸もやろうとするが、しっかりはやれない。手足のストレッチは顔をしかめて、声を発する。マッサージの途中から閉眼していく。声掛けると開眼できる。」
午後 3時 9分頃
看守勤務員の介助を受けて、昼食として、かゆ10分の1程度をOS-1とともに摂取した。
午後3時29分頃
処方薬(イノラス配合経腸用液187.5ml、メコバラミン錠0.5mg1錠)及び常備薬(新ビオフェルミンS錠3錠)を服用した。
午後6時5分頃~午後6時20分頃
Aについて今後仮放免を検討することとし、まずは仮放免の可能性に言及しつつ、体力等の回復を図 るという方針の下、Aの体調確認のため、 居室内で看守勤務員2名(男 性1名(看守責任者)、女性1名)がAと面接。
面接記録によれば,その際のやりとりは,以下のとおり。
勤務員:体調はどうですか。
A:痛い。
勤務員:どこが痛いのですか。
A:て。
勤務員:手が痛いのですね。
(女性看守勤務員が,毛布の下になっていたAの両手を毛布の上に出した。)
勤務員:これで大丈夫ですか。
A:(首を縦に振ってうなずく。)
勤務員:昨日病院に行って,薬が出ていますね。しっかり飲みましょうね。
A :(首を縦に振ってうなずく。)
勤務員:何か希望はありますか。
A:そと。
勤務員:仮放免で外に出たいということですか。
A:(首を縦に振ってうなずく。)
勤務員:もし仮放免になったら,どこに行くのですか。
A:●●さん。(注:度々面会をしていた支援者)
勤務員: ●●さんや▲▲さん(注:いずれも度々面会をしていた支援 者)のところに行きたいと申請しているのでしたね。●●さん達のところに行くために,体を治しましょうね。
A :(首を縦に振ってうなずく。)
勤務員:体力がもう少し回復しないと,行けないでしょうから。頑張りましょうね。
A:がんばる。
勤務員 : トイレに行くとき,職員が肩を貸して,自分で歩けるくらいになればいいですね。頑張りましょう。
A:がんばる。
(Aは終始ベッドに就床した状態であったところ,ここで眠ってしまったため、面接を終了した。)
午後 7時19分頃
看守勤務員2名の介助を受けて、かゆ(スプーン3口程度)及び自費購入品のピーナッツバター(スプーン1口程度)をOS-1とともに摂取した。
午後7時37分頃
処方薬(メコバラミン錠0.5mg1錠,ランソプラゾールOD錠15mg1錠,ナウゼリンOD錠10mg1錠)及び常備薬(新ビオフェルミンS錠整腸剤3錠)を服用した。
午後9時30分頃
処方薬(クエチアピン錠100mg1錠,ニトラゼパム1錠5mg1錠)
を服用した。
午後10時53分頃、3月6日午前 零時4分頃、午前2時15分頃
いずれの際も、Aが就寝している状況を確認。
3月6日午前4時12分頃
Aがベッドに就寝し、「あー。」と声を出している状況を確認。
(2)死亡当日(3月6日)の状況
Aは3月6日(土)午前中,ベッドに就床し,大きく呼吸しつつ,首を上下左右に振ることを繰り返すなどする一方,看守勤務員などの介助により着替えをしていた際に「あー」と声を上げて顔をしかめ,処方薬の服用を受けるなどしていた。
しかし,Aは,午後1時過ぎ以降は,次第に,就床しながら首をかすかに動かす程度となり,午後2時7分頃の看守勤務員による体調確認の際には脈拍が確認されなかったことから,外部の病院に救急搬送されたが,午後3時25分頃,搬送先の病院で死亡が確認された。
3月6日におけるAの主な動静等は、次のとおりである。
午前8時12分頃
看守勤務員2名が入室し、Aの血圧等の測定を実施したが、血圧及び脈拍については、計測器がエラー表示となり測定できなかった。体温は37.5度、血中酸素飽和濃度は98パーセントであった。
午前9時10分頃
看守勤務員4名が入室し、Aに朝食の摂食を促したが、Aは就寝中で問いかけに無反応であった。他方、看守勤務員らが介助を行いながら下着の着替えを実施した際は、Aは「あー」と声を上げ、顔をしかめた。
午前10時40分頃
看守勤務員2名が入室し、朝食の摂食と処方薬の服用を促したが、Aは「あ。」と声を発するのみであった。看守勤務員は、Aの上半身をベッドから起こし、処方薬を服用させた。
午前11時15分頃
Aは、ベッドに就床しながら、大きく呼吸し、胸が上下している状況であった。
午前11時35分頃~午後零時45分頃
Aの居室のビデオ記録では、Aの様子として、以下の状況が認められる。
午前11時35分頃
仰向けに寝た状態で「あー」と発声し、首を振る。
午前11時43分頃
「うーん」と首を振る。
午後零時1分頃
「あーん」と発声。
午後零時10分頃
「うーん」と発声。
午後零時15分頃
「あーん」と発声。
午後.零時23分頃
「あー」と発声し首を左右に振る。
午後零時41分頃
首を上下や左右に振る。
午後零時56分頃
看守勤務員は、Aの昼食が全量未摂食で居室入口の食事搬入口に置かれていることを確認し、搬入口の外から室内のAに向かって摂食を促したが、Aが反応を示さなかったため、昼食用食器を搬入口に残置した。
午後1時3分頃~午後2時3分頃
Aの居室のビデオ記録ではAの様子として、以下の状況が認められる。
午後1時3分頃
首を左右に振る。
午後1時9分頃~15分頃
首をかすかに数回左右に振る。
午後1時16分頃
首をかすかに上下に振る。
午後1時23分頃
首をかすかに数回上下に動かす。
午後1時31分頃
室外から看守勤務員が大きな声で「Aさん、喉渇いてない、大丈夫?」、「Aさん、大丈夫?」と声を掛けるが、Aは反応を示さず。
午後1時50分頃
室外から看守勤務員が「Aさん」と大声で呼び掛けるが、Aは反応を示さず。
午後2時3分頃
室外から看守勤務員が「Aさん、Aさん、聞こえる?」と大声で呼び掛けるが、Aは反応を示さず。
午後2時7分頃
看守勤務員2名が順次入室し、Aの体を揺すったり、耳元で呼び掛けたりしたが、Aは反応を示さなかった。また、看守勤務員がAの体に触れて確認したものの、脈拍が確認されず、Aの指先が冷たく感じられた。さらに、Aの血圧等を測定したが、測定不能であった。
午後2時11分頃
男性の副看守責任者及び男性の看守勤務員も入室し、女性の看守勤務員が再度、Aの血圧等の測定を実施したが、測定不能であった。また、Aの脈拍は確認できなかった。
午後2時15分頃
副看守責任者が電話により救急搬送を要請し、通話を継続しながら、看守勤務員に対し、AED装置の使用を指示し、看守勤務員がAに対するAED装置の装着を開始した。
午後2時20分頃
看守勤務員が、Aの身体にAED装置を装着し終えたところ、電気ショックを与えることなく心臓マッサージを必要とする旨の音声指示が流れたことから、心臓マッサージを実施した。
午後2時25分頃
到着した救急隊員にAの救命措置を引き継いだ。
午後2時31分頃
外部の病院に救急搬送された。
午後3時25分頃
搬送先の病院で死亡が確認された。
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