6月23日 名古屋入管への申し入れ
6月23日、名古屋入管に対し、3月6日の死亡事件の真相解明と再発防止に向けて、長期収容者と体調不良の被収容者を即刻仮放免すること、それができないのであれば体調不良者を外部病院で速やかに適切な治療を行い、状態の改善に努めることを求める申し入れを行いました。
6月2日の申し入れ(「6月2日 名古屋入管への申し入れ」の記事参照)において明らかにしたように、ナイジェリア人男性(Aさん)が、収容中に意識を失い、救急搬送され、外部病院で点滴治療を受けました。Aさんは、その翌日も外部病院で点滴治療を受けました。Aさんは10か月近い長期収容に加え、祖国にいる母親が病が悪化し入院したとの知らせを受け、強度のストレスから食事や水分の摂取ができなくなっていました。名古屋入管は、そのAさんを、スリランカ人女性が亡くなった部屋と同じ単独室に移そうとしましたが、Aさんは、死亡事件の真相解明も進まず、監視カメラのビデオ映像も開示されない現状に対して、単独室に入ったら殺されるのではないか、何かあっても自分に有利な証拠は隠されてしまうのではないかと、強い恐怖感を抱いており、みんなと同じ部屋にいたいと訴えていました。現状では、被収容者にとって、単独室への移動そのものが、強いストレスとなる可能性があり、体調不良者に対する処置として適切な処置とはいいがたい状況がありました。しかし、名古屋入管は、20人くらいの男性職員が、月曜日の未明、寝ているAさんの部屋に押し掛け、嫌がるAさんの両手、両足を縛き、胸を叩く等してAさんを気絶させ、無理やり単独室に移しました。しかも、Aさんが抵抗したことを「暴力を振るった」として、硬い畳の部屋に、ベッド無し、布団無し、フリータイム無しで、5日間閉じ込めると通告されました。これは「懲罰」扱いです。
Aさんが単独室に移されて3日目、STARTが入管に対して文書をもって抗議し、マスコミにもそれを訴えました。すると、4日目、Aさんはベッドのある部屋に移され、マスメディア関係者がAさんの面会に動くと、5日目、それまで7ヶ月以上の間、仮放免が許可されなかったのに、突然、Aさんは保証金無しで仮放免されました。
このAさんに対する扱いからも明らかなように、脱水症状の病人を、大勢の男子職員が力づくで押さえつけ、気絶させ、ムリヤリ部屋を移動させ、しかも、抵抗したことに対して「暴力をふるった」として「懲罰」扱いにする等、名古屋入管では、職員の常軌を逸した行動が平然と行われています。食事も水もとれない病人を、病人扱いしていないのです。またしても「詐病」扱いであり、その根底に外国人に対する差別があるとしか考えられません。名古屋入管はスリランカ人女性の死亡事件以降も、再発防止に向けた改善など、まったくなされていないと言っても過言ではありません。
名古屋入管には今でも体調不良者が多くいます。しかも、入管側の処遇に対して、恐怖感を感じています。こんな状態で収容を続けること自体、間違っています。
入管法において、収容に耐えられない者を収容することは禁止されています。しかし、実際は、収容に耐えられない体調不良者に対して、病気を治すためではなく、症状を緩和するために薬を与える等して収容を続けています。入管の医療は治療が目的というより、収容を続けることが目的になっているのです。最終的には、痛み止め、精神安定剤、睡眠導入剤を与え、薬漬けの状態にされ、人間としてまともな生活ができない状態にさせられてしまいます。
これまで述べてきたように、名古屋入管は、スリランカ人女性の死亡事件が起きた「現場」であるにもかかわらず、死因も特定されず真相も明らかにされない中で、入管自体がストレスの塊のごとき状態に陥っていて、そのはけ口を被収容者である外国人に向けているのではないかと、疑わざるを得ません。このままでは、スリランカ人女性死亡事件と同じような事件が引き起こされても、おかしくありません。
今回の申入れは、このように、いわば再発防止とは真逆の状態の中に置かれ、収容され続けている長期収容者、体調不良をはじめ、被収容者全員の収容からの解放、すなわち仮放免を求めると共に、改めて、スリランカ人女性の死亡事件の真相解明、再発防止に向けて、支援者、支援団体と名古屋入管との協議の場の設置も含めた対策を、速やかに執るよう強く申し入れるものでした。
以上を趣旨とする申入れに対して、対応した名古屋入管の総務課職員(2名)は、「本庁から調査を受けているので」等という言い訳一つできず、眉間にしわを寄せ、ひたすらメモを取るのみでした。「申入れを受けた内容は、関係部署と共有いたします」と返答がありましたが、申し入れに対する回答が得られるまで、ビデオ映像の開示等、ウィシュマさんのご遺族が納得して帰国できるよう、現場の実態を踏まえた申入れを継続していくことを申し伝えました。
死亡事件以降、名古屋入管は、入管建物の4階にある処遇部門に対して、申し入れをすることができないよう、4階への入管職員以外の立ち入りを禁止しました。名古屋入管開設以来、長年続いてきた窓口を、このタイミングで閉鎖することが、真相究明、再発防止に結び付くとは考えられず、「閉ざされた入管」のイメージをさらに強くするものです。
今まさに収容場で苦しんでいる外国人が多くいる中で、真相解明、再発防止は喫緊の課題です。閉鎖的になり、反動的になる名古屋入管を変えるためには、より広範な人々がこの問題を知り、入管問題の実態を知り、関心を寄せ、民主的な改革に向けた声をあげいただくことが必要です。当事者の生活と権利、健康と命を守るために、私たちと一緒に、真相究明、再発防止の声をあげてください。
ご協力をお願いいたします。
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